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不動産トレンド 空き家対策の難しさ(2)

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★☆《空き家対策の難しさ(2)》★☆

REITOメルマガ第87号より

 

 

 

前々回は、全国で増え続ける空き家の中でも、なお快適な居住が可能な住宅の有効活用策についてご紹介しました。今回は、老朽化が進行し、すでに朽廃が近いと思われるような空き家についてです(空き家に見えるが人が住んでいる場合も多いでしょう。)。

これらについては、建物の倒壊、建築材の飛散、不特定の者が建物内に侵入し火災・犯罪の温床になるといった危険性が指摘されます。自治体や地元住民の中には早期に除却してほしいと思う方も多いでしょうが、空き家であること自体は所有者に許容される財産権行使の範疇に入ることから、行政が勝手に除却することはできず、あくまで建物所有者の判断が優先されます。


平成25年4月時点の国交省聞き取り調査では全国200以上の自治体が空き家対策関連の条例を制定・施行しており、中には居住の有無を問わず老朽家屋の解体を促す条例も見られます。例えば東京都足立区が平成23年10月に制定した「足立区老朽家屋等の適正管理に関する条例」は、建物等が「危険な状態」にならないようその所有者等に維持管理を義務付けたり、「危険な状態」にあると認められる建物について区長は実態調査したり、その所有者等に「危険な状態」を解消するため必要な措置をとるよう勧告できる、所有者等の同意を得て区長自ら緊急安全措置を講じることができるといった規定を設けています。


除却費用の一部補助制度もありますが、聞いてみますと、対策が円滑に進まないケースとして、建物が未登記であるなど現実の所有者が不明で探索に時間を要することがあり固定資産税部局との連携を模索している、所有者との交渉がうまくいかず勧告に至ったがなかなか勧告に応じてもらえないといったケースもあるそうです。高齢化の進行も影響しているでしょう。


また、建物の所有者が土地所有者と別人の場合、つまり空き家が借地権付き建物である場合には一層厄介なようです。旧借地法の下で契約された期間の定めのない借地契約の場合、地主つまり借地権設定者が、建物の所有者つまり借地権者に対して建物の朽廃による借地権消滅及び明け渡しを求めることは可能ですが、建物の朽廃の判断は難しく交渉が長期化する可能性もありますし(このため平成4年借地借家法制定において旧借地法に存在した朽廃による借地権消滅規定は削除された。)、朽廃が認められない場合に、借地権者側から建物買取請求や借地権買取請求といった金銭的補償を要求された場合の処理も懸念材料です。


居住用不動産における土地の固定資産税軽減特例があるため、建物を除却してしまうとその軽減を受けられなくなるという問題も多く指摘されます。このため、条例により建物を除却しても固定資産税は引き上げないという措置をとることも考えられるでしょうが、その実例は聞いたことがありません。

民間事業者の方と話しても、老朽空き家の場合は所有者がよくわからないといった理由で取り組みに逡巡する意見も多く、その再生には行政の関与が不可欠という指摘を聞きます。一方、事業者の中には、所有者等との円滑な交渉が期待できる場合には、例えば底地権を買い取った上で借地権者と交渉し、不動産の再生に向けた権利調整等に取り組む例も出てきています。

各地で定められている条例以外にも、所有者確認のための税務情報活用、市町村への立ち入り調査権付与、固定資産税見直しといった規定を盛り込んだ新たな法律を作ろうという動きが進んでいるようです。このような法的仕組みをバックに、不動産の再生に向けた所有者等の理解が醸成されれば、民間事業者の参入も一層進んでくるでしょう。

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不動産トレンド 空き家対策の難しさ(1)

032_thumb★☆《空き家対策の難しさ(1)》★☆

REITOメルマガ第85号より

 

 

 

国土交通省によると、全国の空き家は住宅総数の13%、約757万戸に達したそうです。

当然ながら「賃貸又は売却用の住宅で空き家になっているもの」が約448万戸と最も多く平成10年から20年にかけて1.27倍に増えていますが、問題は「これら以外で人の住んでいない住宅」が約268万戸、平成10年から1.47倍と高い増加率を示していることです。H20 年度で空き家率が最も高いのが山梨県の20.3%、最も低いのが沖縄県の10.3%、都市部に比べて地方部の一戸建て住宅の空き家率が特に増加しているようです。


管理不十分な空き家の増加は、外壁落下や倒壊事故、ごみの不法投棄、景観悪化、犯罪の誘発など様々な悪影響を引き起こすことから、平成25年4月時点聞き取り調査では全国211以上の自治体が空き家対策関連の条例を制定・施行しているそうです。また、所有者不明空き家への対応や除却に強制力を持たせるといった観点から、税務情報を活用できるようにしたり、市町村に立ち入り調査権を与えるといった効果を有する議員立法の動きも進んでいるようです。

国土交通省は、空き家再生等推進事業と呼ばれる空き家住宅の除去や活用等経費補助制度を設けていますが、すでに居住していないオーナーが自ら対策を講じるとは限りません。そこで、このような空き家を何とか売却・賃貸に回し、買い手や借り手によるリフォームなどを通じて、有効活用や除却ができないか、専門の委員会を組織して検討を開始し、各自治体が運営する、いわゆる「空き家バンク」の運用状況などをヒアリングしています。不動産適正取引推進機構も、不動産取引における法律問題についての知見を買われて委員として参画していますが、空き家の発生数に比べてバンクによる制約数が少ないなど、問題を解決するにはまだまだスケールが小さいようです。

空き家といっても、築年数が浅く耐震性はあるようなすぐ住める物件と、朽廃が近いなど老朽化が進んでいるものに大きく分けられます。特に人口減少に苦しむ地方部においては、前者のような物件を移住希望者の方々に安く貸し出し、定住を促進できないか検討されているようです。最初から賃貸を考えるオーナーは不動産業者に頼んで客付をするでしょうから、むしろ行政としては、見も知らぬ第三者と賃貸借契約を結んでいいのか、置きっぱなしにしている荷物をどうするかといった不安で決心がつかないオーナーと交渉して賃貸を後押しする役割が大きいように感じます。

しかし、賃貸借契約というのは、賃料を受け取って建物を賃貸するわけですから、貸主には修繕義務や敷金の返還義務というのがありますし、後日こんな物件なら借りなかったといって、中途解約、損害賠償といった面倒が起こる可能性があるなど、貸主もそれなりのリスクを負い、オーナーの不安ももっともな部分があります。行政に促されて賃貸したところトラブルに巻き込まれた場合、最悪、自治体の責任が問われる事態も考えておかねばなりません。

このため、「空き家バンク」の設計に当たっては、重要事項説明などにより物件の形状や使用のルール、周辺環境などをきちんと説明できる不動産業者の参画を求めることは絶対ですし、不動産業者の仕事は、仲介の申込みから契約、鍵の引渡しまでですから、例えば国の登録を受けた賃貸住宅管理業者による管理を求めるなど、貸主の不安をできるだけ払しょくする環境整備が必要でしょう。

この環境整備を一歩進めて、自治体が、空き家の一括借り上げ、改修、転貸という、まさに「空き家の銀行」としての「空き家バンク」法人を立ち上げれば、オーナーは直接転借人と交渉することがないなど安心感は著しく向上し、「バンク」にだったら安く貸しましょうとなり、過大な利益を求めない「バンク」が移住希望者向けに安く貸せるようになるでしょう。例えば、移住・住みかえ支援機構は住まなくなった家を最低賃料を保証して一括借り上げし、転貸する、いわゆるサブリースの手法を使って利用を伸ばしていますし(平成25年9月末時点で414件の転貸借契約成立)、報道によると、厚生労働省も、NPO法人などが空き家を借り上げ、見守りなどの生活支援を付与した「高齢者ハウス」として低額な賃料で貸し出すモデル事業を来年度から始めるようです(住宅新報平成25年10月22日号)。国としても、空き家対策に悩む自治体を支援する意味で、この辺まで踏み込んだ対策を検討する必要があるかもしれません。

長くなりましたので、朽廃が近いような空き家対策については次回考えてみたいと思います。

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2013年12月1日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:不動産トレンド

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