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不動産トレンド 建築物の耐震化に向けた新しい取り組みが進んでいます

029★☆《建築物の耐震化に向けた新しい取り組みが進んでいます》★☆

REITOメルマガ第82号より

 

 

 

建築物の耐震化に向けて、先の通常国会で改正耐震改修促進法が様々な議論の末に全会一致で可決成立し、11月施行に向けた準備が進んでいます。

この法律は、阪神大震災を受けて1995年に立法されたものですが、今回の改正では、耐震診断及び耐震改修の努力義務の対象を拡大し、現行の建築基準法の耐震関係規定に適合しない全ての建築物を対象とすることとされました。

加えて、病院や劇場など不特定多数の者が利用する大規模施設や小学校、老人ホームなど避難弱者が利用する建物、自治体が指定する緊急輸送道路などの避難路沿道建築物、防災拠点、避難所などの所有者に対しては、耐震診断を義務付け、その結果を一定の期限までに所管行政庁に報告しなければならないこととし、報告を受けた所管行政庁はその報告内容を公表することとなっています。

所有者にとっては、耐震改修や建て替えの必要性はわかるものの、費用調達をどうするか、テナントが再び戻ってくるだろうか、賃料アップにつながるかどうかといった様々な不安があると思われます。そこで、同改正法においては、耐震化促進措置として、耐震診断や耐震改修の助成率引き上げや、増築に係る容積率及び建ぺい率の特例などが行われるとともに、今後、耐震改修促進税制の拡充も検討されているようです。

耐震改修に比べ耐震建て替えの場合は所有者にとって一層リスクが高く、区分所有建築物の場合は合意も一層困難なものになりますが、最近は、老朽マンションの建て替えに伴い、空容積率を使って創出された保留床の売却により工事代金等を捻出することで居住者の負担を減らしたり、隣接する同じような老朽マンションと共同建て替えをすることで高い建物に作り替えて居住者の負担を減らす事例がみられます。

建築物の建て替えは、工事代金以外にも居住者やテナントの理解や移転費用の調達など多くの先行資金が必要となりますが、所有者によっては、税の軽減、補助金だけではこれらの先行資金を賄えないため、自己資金の拠出や銀行融資が必要となるなど資金調達リスクが大きい場合があります。このため、先の通常国会で不動産証券化を規律する法律である不動産特定共同事業法が抜本改正され、必要な資金を投資家から直接集めた特別目的会社(SPC)が、老朽化物件や遊休地を買い取って、必要な工事を行った上で他に売却したり、元所有者にリースバックしたり、売り戻せるような仕組みを整えました(施行は12月を予定。)。マンション建て替えや再開発事業の事業参加者として、デベロッパーに代わって、民間資金を集めた特別目的会社が参画することもありえます。昨年度補正予算で措置された耐震環境不動産ファンド(国土交通省300億円、環境省50億円)は、耐震改修や建て替え、環境対応等を行おうとする特別目的会社などに出資できることとなっており、
民間投資の呼び水として活動することが期待されています。

最近の判例を見ても、経済合理性等の面から耐震改修でなく除却・建て替えを選択した賃貸人が賃借人に対して行った明渡し請求なども、立退料等相応の代償措置を講じることで認められたケースが見られます(平成25年3月28日東京地裁判決、平成25年1月25日東京地裁判決等。)。

建築物の所有者として、建築物の耐震性確保は、テナントや居住者、利用者、周辺住民の安心を高めるために必須のものです。一方、耐震建て替えなどは所有者にとっても一大事でもあるため、補助制度や税優遇の拡充、民間資金を利用しやすくする仕組み、一時的に移転するテナントへの配慮などの制度が整えられていくと考えられますが、具体的な建て替えプラン、資金調達プランまで行政でアドバイスできるものではありません。個々の所有者の相談に乗り、有効な解決策を提示し、実行する不動産関係者の一層の努力が重要であると考えられます。

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