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不動産トレンド 耐震・環境不動産官民ファンドに期待する

001★☆耐震・環境不動産官民ファンドに期待する★☆

REITOメルマガ第86号より

 

 

 

あけましておめでとうございます。
前回は空き家対策についてご紹介しましたが、日本経済の再生が望まれる年の初めでもあり、不動産の再生を資金面から後押しする官民ファンドについてご紹介したいと思います。


昨年末、国土交通省、環境省及び耐震・環境不動産ファンド運営機関である環境不動産 普及促進機構が第一号ファンドマネジャーを選定するとともに、機構出資とこれを上回る 民間出資及び銀行融資を集めて作られた第一号ファンドが再生用不動産1棟を取得したと 発表しました。発表によると、この第一号ファンドが取得したのは東京都内の築年数が一 定期間経過した稼働中のオフィス・住宅複合ビルであり、エネルギー使用量を概ね15%以 上削減する省エネルギー改修工事を行うそうです。

ご案内のとおり、我が国には立地はよいのに老朽化が進んでいる物件が多く(国土交通省「法人建物調査(2008版)」によれば、総数97.4万件のうち、新耐震基準導入前に着工された建物が36.6万件あるが、そのうち32.7万件、全体の33.6%が新耐震基準を満たしていない又は未確認という結果が出ています。)、特に東日本大震災後は耐震性に優れた不動産の需要が増え、病院や劇場など不特定多数の者が利用する大規模施設等の所有者に耐震診断を義務付ける改正耐震改修促進法が施行されるなど、老朽化した不動産の耐震化・環境対応は喫緊の課題になっています。


これらの不動産再生事業は、遊休地の新規開発と異なり手間も時間もかかるので大手デ ベロッパーは手を出しにくく、むしろ準大手、中堅のデベロッパーが積極的に取り組んでいると言われます。老朽不動産や遊休地を取得して再生工事を行って売却しようとする場合、多額の先行資金調達が必要になりデベロッパーの信用力だけでは集めきれない可能性があります。このため、再生事業そのものの魅力や採算性を投資家に説明して出資金を集め、それに見合った銀行融資を集める仕組み、つまりプロジェクトファイナンスとか不動産証券化と呼ばれる手法が必要となります。昨年12月に施行された改正不動産特定共同事業法は、国の許可を得たデベロッパーなどが、投資対象不動産の保有だけを目的とする別会社(特別目的会社とかSPCとか呼ばれます。)を作って、その口座に投資家等から振り込んでもらった資金を使って不動産を購入、改修工事等を行って売却等を行いやすくする仕組みです。改正法の施行日に不動産証券化協会が行った実務研修会には不動産業者や金融
機関を中心に500名近くの参加があったなど注目されているようです。

我が国における不動産投資は問題のないきれいな不動産(耐震性があり屋外広告違反などの法的問題もなく立地が良く稼働中といった投資適格不動産とかコア不動産と呼ばれる不動産)に集中し、老朽不動産を再生してリターンを得るようなバリューアップ投資はあまり行われてきませんでした。2007年に約8.9兆円という過去最高の民間資金が我が国の不動産投資市場に入った時でも、その取得対象は大都市圏に立地する投資適格不動産が主で、これがプチバブルの原因となったとの指摘もあります。

一方、米国の公的年金カルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)などは全ポートフォリオ約2,574 億ドル( 2013 年3月末時点)のうち211億ドル( 約10%)を不動産投資に振り向け、不動産投資の中身も投資適格不動産に限らずバリューアップ投資や開発投資が含まれています。

不動産特定共同事業法も改正され、バリューアップ投資しやすい法的仕組みは整いましたが、投資家からしてみれば、投資したことのない不動産再生事業への投資に逡巡したり、通常より高い利回りを要求するかもしれません。平成24年度補正予算で措置された耐震・環境不動産官民ファンドは、国自らが呼び水的な出資を行って、不動産に投資しようとする民間資金を投資適格不動産だけでなくバリューアップ投資にも振り向ける道筋を作るために措置されたものです。

すでに事業を行っている会社の株を買って出資するのと異なり、不動産再生事業に出資するためには、まずファンドマネジャーが投資家の了解を得た後、不動産のオーナーと買取交渉し、合意ができたところでSPCを作って、そのSPCが投資家と契約を結ぶことで初めて資金を集められるわけですからどうしても時間がかかります。今回の第一号事業も、官民ファンドの出資が呼び水となって他の投資家の資金や銀行融資も集まり、この資金力をもってオーナーと交渉した結果、取得につながったと考えられます。いくら補助金や税制優遇があっても、補助裏や再生後のテナント確保等に不安のあるオーナーは動きません。国の出資を得た不動産再生ファンドなどに物件を売却して再生してもらい、場合によっては再取得・再入居を真剣に考えるようなオーナーが増える契機となるでしょう。

また、同機構の発表によれば、地域の不動産事情をよく知る地銀や信金信組など中心とする174行が国交省も含めたパートナーシップ協定を同機構と結び、銀行側から事業化が進められそうな案件が出てきた場合は、同機構がファンドマネジャーを紹介するとともに採算性等に問題なければ機構出資を検討することとされているそうです。

国会議員の方々と話しても、どんな地域の駅前でも老朽化・遊休化が進んでいる不動産があり、これが放置されることは地域全体が放置されているように感じるとのことです。金融機関だけでなく地元を支える企業や地方自治体などが、知恵と資金を出し合って地域のモニュメントである不動産の再生に取り組まれることに期待したいですね。

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