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不動産トレンド 賃借人の安全・安心のためにすべきこと

029★☆《賃借人の安全・安心のためにすべきこと》★☆

RETIOメルマガ第79号 より

 

 

 

平成23年3月11日の東日本大震災以降、我が国全体で地震等自然災害の発生が懸念されており、防災・減災対応についての動きが、不動産取引の分野においても活発化しているようです。

まず、最近の裁判例を二つ紹介します。

本年3月に東京地方裁判所で出た判決ですが、昭和46年建築の11階建て大規模賃貸マンションを所有する賃貸住宅事業者が、耐震診断を実施したところ、地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が高いとの結果が出て、その後の検討を経て耐震改修が経済合理性に反するとの結論に至り、改修工事を断念して除却する方針となり、賃借人らに対し、建物の明渡しを求めた事案において、裁判所はこの賃貸借契約更新拒絶には正当事由があり、賃貸住宅事業者は、賃借人らに対し、建物の明渡しを求めることができると判示しました。もちろん、居住者に対して、移転先のあっせんを含め退去に伴う経済的負担等に十分配慮した代償措置が提案されていることが考慮されています。

この他、住宅関係ではありませんが、昨年11月に東京地方裁判所で出た判決では、昭和33年頃に建築された鉄筋コンクリートブロック造の建物について、震度5強以上、かつ周期の短い地震動を受けた場合に中破以上の被害を受ける可能性があることから建て替えることが望ましく、相応の立退料を支払うことを条件に、賃貸事業者から賃借事業者へ申し入れた賃貸借契約解約の正当事由が認められました。

このように、耐震性に問題のある建物については耐震改修を進めることが必要ですが、それがどうしても難しい場合、除却等を行うことが裁判上認容される方向のようです。我が国社会における地震等自然災害に対する懸念の広がりを踏まえた考え方なのでしょう。
これまで、住まいとして、また事業所として、大事に長期間使用されてきた建物を除却するのは大変辛い決断だと思われますが、賃借人の安全・安心を確保するためにはやむを得ないということでしょう。

ここで、昨年11月に当機構において実施した賃貸住宅管理事業者へのアンケート調査結果を紹介します。

防災・減災対策の観点から、賃貸人から賃貸住宅管理事業者にあった相談内容としては、耐震診断・点検の実施を約3割、耐震改修工事・補強の実施を約1割5分、老朽化して危険と認められる物件の建て替えや改築を約2割の管理事業者が挙げています。一方、管理事業者が賃貸人に提案している対策の内容としては、耐震診断・点検の実施を約4割、耐震改修工事・補強の実施を約2割、老朽化して危険と認められる物件の建て替えや改築を約3割の管理事業者が挙げています。これらの結果は、首都直下地震や南海トラフ巨大地震が懸念されている地域(1都9件)では、全国平均より概ね高い割合でした。

また、防災・減災対策で必要な工事のための契約解除の賃借人への依頼については、「これまで依頼したことはないが今後あり得る」という管理事業者が約4割であり、首都直下地震や南海トラフ巨大地震が懸念されている地域(1都9件)では約5割という結果でした。

そして、地震、津波、洪水等災害ハザードマップに係る地域情報について、約3割の管理事業者が賃借人への情報提供に取り組んでおり、こうしたソフト面の取組みも、今後ますます浸透していくことでしょう。

こうした賃貸人や賃貸住宅管理事業者における取組みは、東日本大震災以前では考えられないくらい積極的なものとなってきていると推測されます。

賃貸人や賃貸住宅管理事業者にとって、賃借人の安全・安心を確保することは極めて重要な責務と考えられます。今後とも、建物の耐震改修等のハード面の取組みと地域の防災情報の提供等のソフト面の取組みの双方から、着実に、そして粘り強く推進していくことが強く求められています。

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