不動産トレンド

国民生活センターが1月25日に、売れる見込みのない土地を買わされた「原野商法」の被害者が再びトラブルに巻き込まれる二次被害が急増していると発表しました。被害者の土地を高値で買い取ると持ち掛けて、巧妙に別の土地を購入させる手口が目立っており、契約者は平均75.1歳で高齢者が多いと言われています。

昨年4~12月に全国の消費生活センターに寄せられた原野商法の二次被害に関する相談数は1196件で、過去最高だった2014年度を上回ったそうです。支払った金額は1件当たり平均467万円にもなるとの報告でした。

目立つケースは、手続き費用などの名目で金を請求し、実際は土地の売却と同時に新たな土地を購入する契約をさせる「下取り型」です。費用を工面するため自宅を売却させられたケースもあります。今回は、原野商法の二次被害トラブルについて情報提供致します。


そもそも、「原野商法」とは、将来の値上がりの見込みがほとんどないような原野や山林などの土地を、値上がりするかのように偽って販売する手口のことで、1970 年代から 1980年代にかけて社会問題になっていました。国民生活センターでは、過去にも注意喚起を度々行ってきています。

販売購入形態としては、訪問販売と電話勧誘販売がほとんどです。2017 年度は訪問販売の件数が731件(71.6%)、電話勧誘販売の件数が226件( 22.1%)となっていますが、トラブルの内容を分析すると、「あなたの持っている土地を高値で買い取る」といった電話勧誘をきっかけとする「売却勧誘」型の事例が大変目立っていると言われています。この「売却勧誘」型をさらに分析すると、契約内容の詳細を説明せず「手続き費用」「税金対策」などといった名目でお金を請求するが、実際は原野等の売却と同時に新たな原野等の土地の購入の契約をさせている(結果として差額分を支払わせる)という「下取り」型(「売却勧誘-下取り」型)と、売却のために必要だとして原野等の調査や整地などの費用を請求する「サービス提供」型(「売却勧誘-サービス提供」型)に大きく分けられます。最近では、「売却勧誘-サービス提供」型に代わって、「売却勧誘-下取り」型の相談が目立っています。そのほか、数十年前に購入した原野等の土地の管理費を突然請求するという「管理費請求」型も多く見られるそうです。

相談事例から考えられる問題点としましては、以下の通りです。
1.不当な問題勧誘が行われている
(1)契約の重要な部分について、ウソの説明をしている。
具体的には、口頭で説明される売却額と契約書に記載されている売却額が異なっているケースがみられます。また、購入費用は後で返す、消費者が購入した土地は後で業者が買い戻すと説明する事例もみられますが、実際に返金や買い戻しが実行されたケースは確認できておらず、非常に悪質な事案が目立ちます。
(2)原野等を売却する際、土地の購入契約もセットだと消費者に気付かせていない。
原野等の土地の売却契約をする際、業者は「手続き費用」や「税金対策」など、さまざまな名目でお金を支払うように要求しますが、契約書を確認すると、売却契約と同時により高い値段の別の原野等の土地を購入させられたことになっており、様々な名目で支払わされた代金は、実際にはその差額分ということで、この点について、業者は土地の購入契約を消費者に認識させるような説明をしていないケースがほとんどだと言われています。
(3)子供に迷惑をかけたくないという消費者の気持ちに付け込んでくるケースが多い。
1970 年代から1980 年代にかけて現役世代の時に原野等を契約した消費者は現在高齢になっているわけですが、「子供たちに負の財産を残さないために原野等を手放したい」という高齢者の気持ちに付け込んで、悪質な業者は勧誘を行っているものと考えられます。
(4)売却する土地にあたかも価値があるかのようなセールストークを行っている。
「土地を欲しがっている人がいる」などとあたかも売却が確実であるかのような説明や、「オリンピックまでにその土地一帯に複合レジャー施設を造る予定」などと言って、消費者が興味や関心を持っていそうな将来の事柄に絡めて、あたかも売却する土地に価値があるかのように思わせるセールストークが行われているそうです。そのほか、「震災被災者の仮設住宅を作るためあなたの土地が必要」、「福祉関係の施設を造る計画がある」等と社会貢献につながると思わせるセールストークもよく見られるそうです。

2.交付される書面に問題がある
(1)宅地取引と誤認させているケース
業者の中には、「宅地建物取引業」の免許を取得しており、契約書面にも「宅地建物取引業法○○条の規定に基づき~」と記載をしているケースが見られるそうです。しかし、山林や原野などの土地は宅地ではないため、基本的には宅地建物取引業法の適用はありません。
なお、業者が免許を取得していることを信用して契約してしまう事例もみられますが、宅地建物取引業の免許を持っていても、悪質な勧誘等を行う事業者がいるため注意が求められます。
なお、「宅地」とは、「建物の敷地に供せられる土地」のほか、都市計画法上の用途地域内の土地で、 道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外のものもあります。また、「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では、「宅地」すなわち「建物の敷地に供せられる土地」 とは、現に建物の敷地に供せられている土地に限らず、広く建物の敷地に供する目的で取引の対象とされた土地をいうものであり、その地目、現況の如何を問わないものとするとされていまして、原野であっても宅地建物取引業法の適用がある場合もあります。宅地建物取引業法の適用がある場合は、特定商取引法の適用はないことになります。

(2)特定商取引法に定める記載内容を満たしていないケース
(ア)法律に定める記載事項が記載されていない
訪問販売や電話勧誘販売での原野等の取引は原則特定商取引法の対象であり、業者には特定商取引法に定める記載事項(クーリング・オフの条件など)が記載された書面の交付が義務付けられています。しかし、記載すべき事項が記載されていないなど、不備のある書面が用いられているケースがよく見受けられます。
(イ)クーリング・オフはできないと誤認させる記載がある
業者が用いる契約書面には「本契約は買主自らの申し出により自宅にてご契約させて頂いているので、クーリング・オフの適用は除外といたします」などと記載がある場合があるそうです。しかし、そもそも自宅ではない場所で契約しているなど、事実と異なる記載が行われているケースがみられ、このような記載は、クーリング・オフはできないと消費者が誤認するおそれがあり非常に問題だと言えます。消費者自らが主体的に自宅での契約を望むケースはなく、業者から訪問したい旨の申し出があり、これを承諾したケースがほとんどかと思いますので、この場合、「請求」にはあたらずクーリング・オフの適用除外となることはありません。

(3)請求の根拠が不明
根拠がはっきりしないにもかかわらず、数十年前に契約した土地の管理費等の支払い義務があるとして請求書が送付されるケースがみられますが、このケースにおいては、業者が支払督促を行う場合もあり、注意が必要です。

(4)深刻な相談事例が寄せられている
契約時に支払う金額が高額化しているだけでなく、お金がない高齢者に対して自宅を売却させてまでお金を支払わせるなど高齢者の財産を根こそぎ奪う深刻なケースまで発生しています。

(5)消費者がクーリング・オフの通知をしても対応されず、業者と連絡不能になる
ほとんどのケースで最終的には連絡がつかなくなるそうで、取引業者の事業実態が不明であり、詐欺のおそれも十分に考えられます。

以上のことから、消費者への注意喚起が今後さらに必要です。対策としては、以下の通りです。
(1)「土地を買い取る」「お金は後で返す」などといわれても、きっぱり断る。
原野商法で購入した土地について、「土地を買い取る」などといった勧誘で実際に消費者が利益を得られたケースは皆無です。トラブルに遭うおそれが非常に高いため、電話や自宅への訪問で勧誘を受けてもきっぱりと断ることを業界全体でも注意喚起する必要があります。

(2)宅地建物取引業の免許を持っていても注意する。
宅地建物取引業の免許を持っていても、悪質な勧誘等を行う事業者がいるため、原野等に関する売却話があったときは、慎重に対応することを呼び掛ける必要があります。

(3)根拠がはっきりしない請求にはお金を払わず毅然と対応する。
請求書が送られてきても、言われるがまますぐにお金を支払わないようにすることです。但し、裁判所から特別送達が送られてきた場合には、そのまま放置すると、業者の請求がそのまま認められてしまうおそれがありますので、絶対に放置せず、すぐに消費生活センター等に相談していただきたいと思います。

とにかく、少しでも不審な点を感じたら、すぐにお金を支払うことは絶対にせず、消費生活センター等に相談しましょう。周りの人も高齢者がトラブルにあっていないか気を配り、原野商法の二次被害トラブルを関係者同士の協力で防ぐことかが求められます。周囲の高齢者の生活に不自然な点があれば消費生活センター等へ相談するよう勧めましょう。


REITOメルマガ第135号より